不妊症に関係する卵子の質は、生活習慣で良くも悪くも変わってきます。
妊娠するために、食事内容を見直している人も多いのではないでしょうか。
妊活をしている方の多くが、食事に追加して、葉酸をサプリメントから摂取しています。
しかし葉酸について、誤った認識をしている場合には、注意しなければなりません。
今回は、葉酸の正しい知識や、妊活サプリの成分についてご紹介します。
葉酸は、今では妊活サプリとして女性だけでなく男性にも知られている有名な栄養素です。
テレビCMや、雑誌、ネットなど数多くの媒体を通じて、赤ちゃんが欲しい女性は葉酸サプリを飲むということが広まりました。
きっかけは、厚労省からの正式な通知です。
2000年以前から欧米諸国において、赤ちゃんの神経管閉鎖障害の原因に葉酸が不足していることが関与していると分かりました。そこで葉酸を摂取することで神経管閉鎖障害の発症率を下げることが報告されたのです。
ここから数多くの研究が行われ、葉酸と新生児の先天性異常疾患(二分脊椎や無脳症など)との関係性について明らかになりました。
このことをきっかけに日本でも厚労省が、妊娠の可能性のある女性に対して葉酸の積極的な摂取を呼びかけました。推奨量は、妊娠前1か月~妊娠3か月の女性は、通常の食事に加えて栄養補助食品から1日当たり400ug摂取することとしています。
特に、妊娠の4~6週頃の細胞分裂で葉酸が多く必要なので、妊娠に気付かないうちに時期が過ぎてしまうことがないよう、このような通知となったのです。
葉酸は水溶性ビタミンであり、ビタミンBの一種です。
厳密にいうと、葉酸は食品に含まれる「プテロイルポリグルタミン酸型」と、サプリメントに含まれる「プテロイルモノグルタミン酸型」の2種類があります。
サプリメントに含まれるプテロイルモノグルタミン酸型の葉酸は、食事から摂る葉酸よりも吸収率が2倍になっていることが特徴です。
葉酸が不足すると、血管障害を招きやすくなり、虚血性心疾患や動脈効果のリスクが高まります。また、適切に摂取していれば、アルコールによる乳がん・大腸がんのリスク低下の傾向があることも分かっています。*1
食事からの摂取は、調理方法や体内での消化過程により、サプリメントより吸収率は下がります。しかし、野菜や他の食品から摂取することで、葉酸以外の栄養素を摂れるというメリットもあります。
葉酸サプリメントだけでは摂取できないビタミンB12やビタミンCなど、一緒に摂ることで吸収率が上がる食品も選ぶことが重要です。
葉酸は、妊娠のしやすさに関係しておらず、妊娠率が上がるというデータは現段階ではありません。論文や研究結果に基づいた科学的根拠のある情報を正しく身につけましょう。
妊活サプリとして近年注目されている成分を2種類ご紹介します。
1つ目はNMNです。NMNは聞きなれない用語かもしれませんが、あらゆる生物に存在する、体内で自然に生成されている物質です。
年齢を重ねると、ミトコンドリアの質が低下しあらゆる組織が老化することが分かっています。
NAD+は、ミトコンドリアの活性化に必要な物質で、DNAの修復やエネルギーの正常な生産に欠かせない物質です。そのNAD+の前段階の成分が、妊活で注目されている「NMN」です。
マウス実験では老化した卵母細胞にNMNを添加し、NAD+レベルを回復させると成熟率の向上が見られた報告があがっています。*2
現在もヒトに対する臨床研究が数多く進められておりNMNのあらゆる働きが明らかになってきています。
NMNは食品に含まれる成分で、2020年には厚労省の規制緩和によりサプリメント化が可能となり、2022年に妊活最適化NMNサプリが開発されています。
2つ目はビタミンDです。ビタミンDは、かつおや卵・干し椎茸などの食品からの摂取と、肌に日光を浴びることで紫外線から体内で生成することが可能です。
ビタミンDは、卵巣や子宮の正常な機能を維持するのに必要な栄養素であることをご存じでしたか?ある調査では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性にビタミンDを摂取してもらったところ、PCOSの改善に有益な結果が出たことが分かっています。*3
その他にも、ビタミンDを継続して摂取することで妊娠率が4倍という結果になり、妊孕性(妊娠のしやすさ)に影響していることが示唆されました。*4
今、妊活や食生活の改善のために多くのサプリメントを飲んでいる方もいらっしゃるでしょう。
不妊治療をしている女性の半数近くは、サプリメントを摂取する習慣があります。なんとなく人から勧められて飲んでいるという方は、成分をもう一度見直してみませんか。
エビデンスバンクは弊社が独自に開発した専用の検索データベースシステムです。
成分の内容や、気になっている悩みを検索ワードに入力すると、該当する論文が抽出される仕組みです。
※現在はシステム開発中となります。ご利用可能となりましたら、HPにてお知らせいたします。
例えば、キーワードに「葉酸」と入力すると、葉酸に関する医療論文が検索結果に表示され、どのような作用があるのか科学的根拠を調べることができます。
世界中で医療論文は3,000万件近くあり、常に進歩し続ける最新の情報を得る必要があります。
体に入れる成分が、卵子の質に直結し、妊娠しやすい体づくりの第一歩となると言っても過言ではありません。エビデンスバンクでは、しっかりとエビデンスのある学術データを簡単に調べることができるので、利用することを検討してみましょう。
妊活サプリとして、最初に人気となったのは第一世代の葉酸サプリメントです。
葉酸は、赤ちゃんの先天性異常疾患のリスクを軽減させることが可能です。
妊活をしている間は、葉酸だけでなくバランスの良い食事を心掛けることが大事です。成分の作用を正しく認識して、程よい量を摂取しましょう。
第二世代は、2014年頃に登場したサプリメントです。これらは、卵子の老化に着目し、ミトコンドリアの活性化に間接的な作用をしています。
現在、第三世代の新しい妊活サプリとしてエビデンスの確立したNMNが脚光を浴びています。卵子の質の維持は妊娠のために、まず取り組むべき課題です。
加齢により毎月減り続ける卵子。残りの卵子の質を実年齢並みに維持するためにも摂取することを検討してみませんか。
2021年3月 厚生労働省
妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~解説要領
https://www.mhlw.go.jp/content/000776926.pdf
2021年6月 厚生労働省
葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html
*1 2003年 坪野 吉孝
葉酸摂取と大腸がん及び乳がん罹患に関するコーホート研究
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-15026202/
*2 2019年6月 Xinghan Wu,Feifei Hu,Juan Zeng,Longsen Han,Danhong Qiu,Haichao Wang,Juan Ge,Xiaoyan Ying,Qiang Wang
NMNAT2-mediated NAD + generation is essential for quality control of aged oocytes
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30909324/
*3 2016年5月 鎌尾 まや
ビタミン D と生殖機能 Vitamin D and Reproductive Functions
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/90/9/90_445/_pdf
*4 2016年6月 鈴木光幸
成人病胎児期発症説からみた低出生体重児増加と若年女性の健康力に関する検討
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-25870726/25870726seika.pdf