妊活ゼミナール

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今日の授業

将来子供を望むなら「妊娠能力(妊孕力)」を知っておきましょう

皆さんはご自身の妊娠能力(妊孕力)について把握できていますか?

「卵子の老化」がクローズアップされ、いまでこそ年齢による妊娠率の低下が認識されていますが、妊娠について正しい知識を持っている人はまだまだ少ないのが現状です。

不妊治療をすれば高齢でも授かると思っている人も少なくありません。

本記事では、妊娠能力について正しく理解し、妊娠率や不妊の原因となる習慣や病気についても解説します。

子どもを望む方は、出来るだけ早くから妊娠の知識を身に付けて対策をしましょう。

自分の「妊娠能力(妊孕力)」は知っていますか?

妊孕力(にんようりょく)という言葉は、聞きなれない人も多いかもしれませんが、妊娠する能力を意味しています。

女性の妊孕力は、20代前半が最も高く、それ以降は下降し続け30代後半になると著しく低下します。

女性の卵子の数は生まれつき決まっていますが、月経と共に毎月減り続けます。妊孕力が高い20代前半では10万個あった卵子は、30代後半になると2万個まで減ります。

このような妊娠のしやすさについて、きちんと理解している人は少ないのが現状です。

多少、不正出血があったり月経周期が乱れたりしても、生理が来れば妊娠できると認識している人も少なくありません。

妊孕力の知識を正しく持っているということは、将来の子どもの妊娠のしやすさに関係していると世界で注目されています。

妊孕力の知識について調べた調査では、子どもを望むカップルに対して、妊娠のしやすさに関わるクイズの正答率を比較しました。その結果、14か国の中で日本が最下位でした。*1

日本の妊娠能力に関する知識は低い

2020年の東京医療保健大学の研究によると、日本の中学校での性教育に費やされた時間は3年間でわずか9時間のみであることが分かっています。
日本では子どもに対して積極的に性教育を行うことに、不適切だと抵抗する人がいることも事実です。受精という言葉を教えても受精の過程には言葉を濁すよう定義され、性犯罪や避妊についてはほとんど触れられていません。

日本の性教育は、先進国の中でも遅れていることがわかります。

イギリスでは未就学児に対して、性犯罪予防のアニメで教育をしていたり、フランスの中学校では性教育のワークショップの時間を義務付けていたりと、幼い頃から性教育について十分な時間を費やしているのです。

1周期あたりの妊娠率は25歳でも約22%

20代であれば、すぐに妊娠できると思っていませんか?
最近は芸能人でも高齢出産した人が取り上げられるため、不妊治療をすれば40代でもすぐに子どもを授かることができるといった誤った認識を持っている人は多くいます。

18歳から34歳までの未婚女性を対象とした調査では、女性の加齢と妊娠率の低下の関係性について正しく理解していない人が7割以上という結果でした。*1

しかし、思っている以上に妊娠は簡単なことではなく、奇跡の連続です。

25歳でも自然妊娠する確率は、月経1周期あたり約25〜30%。35歳になると月経1周期あたり約18%まで下がります。*2

その他、パートナーの年齢、子宮内膜症や月経異常の有無、生活習慣によっても妊娠率は下がります。

しかし妊孕力は、女性の年齢が最も影響しています。年齢にともなって、卵子の年齢も高齢になるということを理解しておく必要があります。

加齢の他に喫煙や性感染症も不妊症の原因になり得る

女性の妊孕力の低下は、加齢だけが原因ではありません。
特に20代の若いうちからきちんとした生活習慣を心掛けることが、将来の妊娠のしやすさに直結します。

喫煙は、月経周期の乱れや不正出血など卵巣機能を低下させる原因になることはご存じですか。

ある研究では、20代で1日に20本以上タバコを吸う人は、非喫煙者と比較すると、7.5倍もの月経周期の異常リスクが高まることが分かっています。*3

さらに、今禁煙している女性でも、注意が必要です。18歳未満でタバコを吸っていた場合は非喫煙者と比較して9.8倍もリスクが高くなりました。

喫煙していなくても、周囲からタバコの煙を吸う機会が多いと、同じように女性ホルモンの分泌を抑制してしまいます。

また、性感染症についても不妊に大きな影響があります。
クラミジアや淋病などの性感染症は、卵管の癒着を招くので、卵管閉塞や子宮外妊娠のリスクを高めます。女性だけでなく、男性の精子の状態も悪くなってしまうので更に妊娠率が低くなります。

18歳から34歳までの未婚女性を対象とした調査では、性感染症についての知識が低く、不妊の原因になることを理解していない人が半数を超えていました。*1

避妊具に関する正しい知識や行動は、将来の妊娠能力に関わるため、特に重要です。
コンドームの使用について、女性から使用を促すよう行動できる人は2割しかいません。

避妊具は、意図しない妊娠を避けるだけでなく、性感染症予防として必要であることを改めて理解しましょう。

ブライダルチェックと共に今からできる卵子老化対策を

喫煙は卵巣機能を低下させ、通常の加齢にともなう卵子の質の低下を加速させます。つまり若い女性でも、年齢以上に卵子の老化が進み、妊娠率が低くなってしまうのです。

さらに性感染症も、不妊の原因になり得ます。
特にクラミジア感染症は、女性は自覚症状が無い場合が多いです。

気付かずに放置していると、卵管にまでクラミジア感染を引き起こし、卵管閉塞などの不妊につながってしまいます。

年齢とともに妊孕力が下がることも意識して、未婚女性でもブライダルチェックを行う人が増えています。

ブライダルチェックでは、性感染症のチェックや、女性ホルモンの値、子宮頸がん検査など妊娠に関わる幅広い健康診断を受けることが可能です。

妊孕性を意識して、年齢以上に卵子が老化することのないよう対策をしながら、セルフチェックを行うことを検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献

*1 2020年3月 竹本奈央、木島楓、岡本美波、上村茉由、小久保瑠奈、潮谷花野、高崎由利恵、田村梓、原七重、藤本彬宏、朝澤恭子、小嶋奈都子、篠原枝里子
青年期男女における妊孕性知識の関連要因
https://www.thcu.ac.jp/research/pdf/bulletin/bulletin14_05.pdf

*2 2017年4月 大分県
今 伝えたい!いつかは子どもを・・・と考えているあなたたちへ~知っておきたいからだのこと~
https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/190212.pdf

*3 2011年6月 酒井 ひろ子
妊娠が期待される時期にある女性のための月経を考慮に入れた禁煙支援の開発
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791751/

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