一昔前まで、25歳前後が結婚適齢期と言われ、25歳という歳は女性にとって出産のための卵子、体力、精神的余裕がもっとも整った状態で、子供を産むピーク年齢として出産適齢期=結婚適齢期として言われていました。
しかし、2022年の日本の初産年齢は平均30歳、1985年では25歳なので、約30年間で初産の年齢は約5歳も遅くなったのです。
30歳で初産、そこから2人目が欲しいとなると35歳を超える方も少なくありません。なんと日本は世界138ヵ国中3位(同率3位は韓国)の高齢出産大国なのです。
出生率の高かった時代は不妊症という明確な病名も認知されていないほどでした。
しかし30歳から40歳で初産となると、卵子の元となる原始卵胞の数は減り、卵子自体の老化が進んでしまい、体外受精となっても成功率は年を重ねるごとに下がっていきます。
~29歳 | 40%以上 | |
---|---|---|
30歳~34歳 | 35%以上 | |
35歳~39歳 | 25%以上 | |
40歳~44歳 | 10%〜20% | |
45歳~49歳 | 5%未満 |
女性の平均寿命が、この40年で8歳程度伸び、延命医療や美容外科的なアンチエイジング医療は進化し、若々しく長生きすることができる時代にはなりましたが、それに伴って女性の出産能力も高まったかというとそうではありません。外見が若々しくなっても卵子自体は年齢に合わせて老化してしまいます。
体内部の若返り(エイジング)医療は
第3世代を迎えている
30代を超えても妊娠適齢期の卵子の質を保つためには、美容外科などの表面的なアンチエイジングではなく、生殖細胞自体を若返らせる(エイジング)必要があります。
若返り医療はここ10年で本格的に研究され、2000年初頭の第1世代から現代の第3世代を迎えています。
第1世代の若返り(エイジング)
日本では老化対策というと「抗酸化」というイメージが根強く錆びない体づくりなどというキャッチフレーズが出回っていました。
活性酸素が過剰に増えると老けるなどという話を聞いたことはありませんか?
この2000年頃の「酸化が老化」と言われていた世代を第1世代のエイジングケアと言います。
第1世代の抗酸化成分は、ビタミンCやポリフェノール、コエンザイムなどが化粧品やサプリメントで人気がありました。しかし、その後の研究で老化と酸化はあまり関係がないことがわかってきました。
第2世代の若返り(エイジング)
2010年ごろに第2世代のエイジングケアは「ミトコンドリア」を活性化する方法が主流に。
ミトコンドリアは卵子の中にも多く存在し、ミトコンドリアDNAはその細胞を生かしたり殺したりする指令やその細胞のエネルギー製造に関わっています。卵子が受精し胚分割するタイミングで多くのエネルギーを必要とするため、卵子のミトコンドリアを活性することは非常に重要です。
老化とは直接的ではなく間接的に関わっていますが、卵子にとってとても大切な器官です。
現代医療第3世代の若返り(エイジング)
米ワシントン大学が2016年に、慶應義塾大学医学部が2020年にそれぞれ、「老化に関する原因解明と若返りを実現する成分の研究発表を行なった。
そこで注目されたのが「若返り薬」として知られるニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)だ。
NMNは、もともと糖尿病治療として研究されていたが、その遺伝子研究の過程で直接的に抗老化を起こすことが明らかになった。
しかも、NMNは経口摂取後、約15分という短時間で腸から吸収され、NAD+に変換され抗老化の効果を発揮する。
NMNは発売当初は非常に高価な成分であったが、価格競争も起こり、近年では妊活向けのNMNも手の届く価格となってきている。
2000年ごろから本格化された若返り研究は、第1世代から第3世代に進化し、これまでの老化は体の錆だから抗酸化が抗老化につながるといった、安易な効果機序ではなく、老化とは体内のNMN量の減少がもたらすことを証明してみせた。
【参考】
慶應義塾大学
世界初抗老化候補物質NMNを、ヒトに安全に投与できることが明らかに
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2020/1/21/28-66964/
ワシントン大学研究若返り薬「NMN」が、超高齢化の日本を救う
https://business.nikkei.com/atcl/interview/15/238739/102700215/
女性の不妊症の原因は様々あるが、その半数が卵子に関係している。
今後、不妊症などを含む加齢関連疾病の治療や予防のための、NMNを利用した科学的根拠に基づいた栄養学的アプローチを行なっていくという。
30歳を超え、妊娠適齢期を過ぎた女性が出産を望むのであれば、それが自然妊娠であれ、体外受精であれども、その中心となる生殖細胞「卵子」の老化対策はしておいた方が良いだろう。